【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

「はああ⁉」

 思わず声が裏返った。

 二人を引き離そうと仕掛けた海外転勤の話が、まさか“逆にくっつくきっかけになるなんて……。

おいおい、それはないだろ!

《え、いや、でも……》

 スピーカー越しに、捺美が戸惑う声を上げる。

「止めろ!」

 俺が声を張り上げると、高城はぎょっとして慌てて音量を切った。

「どうしてですか! これからが一番大事なところじゃないですか⁉」

 二人の会話を聞きたい一心なのか、高城は食い下がるように反論してきた。

「駄目だろ、さすがにこれ以上は駄目だろ、人として!」

「倫理観や道徳観に縛られている場合ですか⁉ いいのですか、佐伯に取られても!」

「いいわけないだろ!」

「じゃあ──」

「これ以上言うな!」

 俺の一喝に、高城は口をつぐんだ。

 この先を知りたい衝動を必死に抑え込む。

それでも、二人が愛し合っていると突きつけられるのが怖かった。

 知りたいのに、知りたくない。相反する思いに苛立ち、乱暴に髪をかき上げる。

「まあ、社長がそれでいいなら……」

 高城は不服そうにパソコンを閉じた。

 俺は黙って窓際へ歩き、街の喧騒を睨みつけるように見下ろした。

 賑やかなはずの景色が、やけに遠く感じられた。