【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

「しかし……離婚の話まで出たとなれば、かなり末期ですね」

「おかしいと思わないか? つい最近まで、甘い時間を過ごしていたんだぞ。それが急に冷めたみたいに、離婚を切り出すなんて……」

「理由なんてひとつに決まっています」

 高城は淡々と言い放った。

「――男ですよ。他に男ができたのです」

『そんなわけない』とは言えなかった。

むしろ、その線しか考えられないほど――高城の言葉は妙に説得力があった。

「……佐伯、か」

 小さく呟くと、胸の奥に暗い感情が渦巻く。

 真面目で不愛想な顔をしておきながら、裏では女を惑わせていたなんて。

「あの野郎……」

 奥歯を噛みしめた俺は、勢いよく身を起こして高城を見据えた。

「決めたぞ。佐伯を海外に飛ばす」

「おお、ついに決断しましたか」

 高城の口元に笑みが浮かぶ。

「もうなりふり構っていられない。アメリカでもフランスでもいい。あいつが飛びつきたくなる条件を出せ。たとえ半年でも一年でも、短くて構わない。とにかく捺美から引き離すんだ」

 決意に燃える俺を見て、高城は愉快そうに目を細めた。

「提案しておきながらアレですけど、卑怯ですよね」

「言うなよ……」

自分でも痛感していたことだけに、胸にぐさりと響いた。