【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

 魂が抜け落ちたような心境で出社したが、捺美にはみっともない姿を見せたくなくて、必死に平常心を装った。

 けれど社長室にたどり着いた瞬間、膝から崩れ落ちるようにソファへ倒れ込む。

「社長、大丈夫ですか?」

 さすがの高城も、いつもの軽口を封印して心配げに声をかけてきた。

「……大丈夫じゃない。今日は仕事にならない。早退したい」

「それは困りますね。午後には会議がありますし、明日締め切りの案件もいくつか」

「鬼か。俺に人権はないのか」

「ありません」

 きっぱりと言い切る高城に、思わず睨みつける。

 こいつが気にしているのは、俺の心身じゃなくて仕事のことだけだ。

「どうしたんです? ――離婚したい、とでも言われましたか?」

 図星を突かれ、胸の奥が再び抉られる。

「……『離婚したい』じゃない。『離婚しない?』だ」

「同じようなものですよ」

 再び睨みを向ける。

俺がこれほど傷ついているのを前にして、容赦なく塩を塗り込むとは、本当にサイコパスかもしれない。