(よし、夕飯でも作ろう!)

 味のこえた大翔に、手料理を振る舞うことをためらっていたけれど、マズくなければ食べられるでしょ、と自分を納得させる。

 作りながら、不安になる。いつまで夫婦でいられるんだろう。

 契約に乗ったときは、すぐに離婚できる方がありがたいと思っていた。

 でも今は、大翔と離れてしまうのが寂しいと思っている。

別れたら、社長と大勢いる社員の一人になってしまう。

 もう二人きりで会うことはないだろうし、会話を交わすことさえ難しくなる。

 想像するだけで、胸がぎゅっと痛くなる。

私だけに向けられる大翔の笑顔。大翔とのキス。

すっかり恋人気取りで側にいたことを思い知る。