【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

 佐伯はどこか満足げな顔をしながら、捺美と並んでデスクへ戻っていく。

 ――夫である俺が、妻のただの上司に嫉妬している。おかしいだろ!

「だああ! 腹立つ!」

 社長室へ戻るなり、俺は思い切り声を張り上げた。

 応接ソファに腰をかけ、優雅にコーヒーを飲んでいた高城が片眉を上げる。

「いやあ……なかなか勇猛果敢な男ですね。たとえクビになっても構わないという気迫を感じましたよ。もっとも、彼に辞められたら困るのは我々ですが」

 痛いところを突かれる。

 たしかに佐伯の優秀さは誰もが認めるところだ。

肩書きは課長でも、実際は営業部長以上に仕事ができるのは社内の共通認識。

「あいつ……俺たち夫婦に愛はあるのかなんて言ってきた。明らかに、なにか知っている」

 高城はカップを置き、興味深そうに俺を見やった。

「捺美さんが佐伯さんに相談したんじゃないですか? 女が男に相談する時っていうのは、乗り換えようと思っている時ですよ」