【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

――報告書が気になって仕方がなくなった俺は、ついに捺美の働くフロアへ足を運んだ。

 できるだけ目立たず、仕事を邪魔しないように……と身をひそめたつもりだが、すぐに社員たちがざわつき出す。

 慌てて「静かに!」と人差し指を唇に当てて合図を送る。

 捺美だけは、周囲のざわめきなどまるで耳に入らない様子だった。

書類に視線を落とし、凛とした横顔で黙々と仕事をこなしている。

まるで自分の世界に籠もっているみたいだ。

 遠目からでも、その集中力に惚れ惚れする。

 ……そして、改めて思う。やっぱり、捺美はとんでもなく美人だ。

 大人の艶やかさだけじゃない。可憐さも併せ持つ顔立ちは、万人を惹きつける。

 白い肌は透き通るようで、昔から人気があったのも当然だ。

 それでも恋人がいなかったのは――高嶺の花すぎて、誰も手を伸ばせなかったからに違いない。

 まあ、これだけ分厚い壁を作ってきたのなら当然か。

俺だって、簡単には声をかけられなかったくらいだ。