【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

「愛する妻が困っているのを助けるのは、夫として当然の責務だ」

「でもバレたら即、離婚ですよ」

 思いきり睨みつける。図星だから腹が立つ。

 報告によると、捺美は入社当初から同僚たちに嫌がらせを受けていたらしい。

 理由は――美人だから。

 あまりのくだらなさに、怒りで震えた。

 怒りに任せて、捺美を虐めていた者たちを全員クビにしてやろうかとまで考えた。

けれど証拠はなく、個人的な感情で処分するのは道義的に許されない。

めずらしくまともな高城の助言もあって、どうにか踏みとどまることができた。

嫌がらせといっても、直接なにかをされるわけではなく、せいぜい嫌味を言われる程度だったらしい。

それでも俺には腹立たしくて仕方がなく、部署を異動させたり、捺美に関わらせないよう裏で根回しをしてきた。

社内でかげ口や悪口を叩く者がいれば、こっそり動いて直属の上司に注意させた。

 ――すべては、捺美が快適に働けるようにするため。

 そう自分に言い訳しながら報告書を読み進めていた手が、ある一文で止まった。