【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

 もしかしたら継母は、最初から私を家に縛りつけるために、大学を勧めたのかもしれない。

 家の掃除まで終えると、時計の針はすでに二十二時を回っていた。

 エプロンを外し、通勤バッグを手にして家を出る。

 ──この時間なら、もう会社に残っている人はいないはず。

 本当はいけないとわかっている。

それでも残してきた仕事を片付けたくて、足は自然と会社へ向かっていた。

 アプリのタイムカードを更新したあとに、こっそり会社へ戻るなんて、上層部に知られたらきっと叱られる。

上場企業はそういうルールに厳しいから。

 でも、こうでもしなければ終わらない。

やるべきことを片付けなければ、佐伯さんに怒られてしまうし、定時で帰ることだってできなくなる。

 ビル裏手の社員専用口に社員証をかざす。

自動扉の奥は真っ暗で、静まり返っていた。

 会社の方針で深夜残業は好まれないため、この時間に残っている社員はほとんどいない。

 暗いオフィスは、ぞっとするほど不気味だ。

 好きでやっているわけじゃない。

残業代は出ないし、寝不足にもなる。

 たいした学歴もなく、特別な才能があるわけでもない。

そんな私が入れた一流企業だ。

だからこそ、必死にしがみつきたい。