朝、一緒に出勤しても、捺美は「じゃ」と軽く言って、すぐ自分の部署へ向かってしまう。
最初は社内の好奇の目に戸惑っていたようだが、今では気にすることなく仕事に打ち込んでいる。
身体は華奢で、透き通るような透明感と愛らしい見た目に騙される者も多いだろう。
けれど、捺美の内面はむしろ男前だ。
そんじょそこらの男よりも我慢強く、責任感があり、決断も早い。
俺が守らなくても、自分の力で生き抜ける胆力を備えた女だということは、わかっている。……わかってはいるのに。
社長室に入ってデスクに腰を下ろし、最初に目を通すのは――昨日の捺美の行動をまとめた報告書。
婚約が決まってから、俺は営業事務の部署に「監視役」を潜らせ、彼女の周囲を見張らせている。
嫌がらせから守るために。
「なにを朝から熱心に読んでるのかと思えば……また奥さんの報告書ですか。愛が重すぎてキモいっすよ」
応接ソファにふんぞり返った高城が、呆れ顔で言う。
最初は社内の好奇の目に戸惑っていたようだが、今では気にすることなく仕事に打ち込んでいる。
身体は華奢で、透き通るような透明感と愛らしい見た目に騙される者も多いだろう。
けれど、捺美の内面はむしろ男前だ。
そんじょそこらの男よりも我慢強く、責任感があり、決断も早い。
俺が守らなくても、自分の力で生き抜ける胆力を備えた女だということは、わかっている。……わかってはいるのに。
社長室に入ってデスクに腰を下ろし、最初に目を通すのは――昨日の捺美の行動をまとめた報告書。
婚約が決まってから、俺は営業事務の部署に「監視役」を潜らせ、彼女の周囲を見張らせている。
嫌がらせから守るために。
「なにを朝から熱心に読んでるのかと思えば……また奥さんの報告書ですか。愛が重すぎてキモいっすよ」
応接ソファにふんぞり返った高城が、呆れ顔で言う。



