【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

どんな我儘でも叶えてやりたいし、むしろ言われなくても先回りして尽くしたい――。

 自分でも「同じ男か?」と疑うほどの変わりようだ。

 なのに、人生はうまくいかないものだ。

 欲しくもない女たちは寄ってくるのに、一番欲しい女性には拒まれる。

 契約結婚とはいえ、彼女と夫婦になれたのは奇跡だと思っている。

 だが今の俺たちは、夫婦どころか恋人にすらなれていない。

 絶対に離婚なんてしたくない――誰だ、離婚前提だなんて言ったのは。俺か。

 既成事実を作って、「離婚なんて面倒だからこのままでいい」と思わせたい。

 そして、気づけば心を通わせ、本物の夫婦になって、子どもができて、温かな家庭を築いて――。

 ……それが理想だが、現実はそう甘くない。

 キスまでは許されても、それ以上は拒まれてしまうのだから。

手は出さない、なんて約束は華麗に反故にしたわけで、これ以上は強いることはできない。

でも、キスは許してくれるのに、それ以上は駄目。

 いったい、どんな基準なんだろう。俺は、彼女にとってどういう存在なんだ?

 考えがまるで読めないところすら愛おしくて、気づけばすべてが可愛く思えて、ますます惹かれていく。

 たとえ利用されていようが、踏み台にされていようが構わない。

捺美に踏み台にされるなら、それすら本望だ。……ヤバいな、俺。