【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

「やっ……あ……大翔……」

 捺美の黒く艶やかな長い髪がベッドの上で波打つ。

 長いまつ毛に縁取られた大きな瞳が潤み、物憂げに俺を見つめている。

 透き通るように白い頬はほんのりと赤く染まり、指先に吸いつくような肌は、なめらかで柔らかい。

 絡めた手を離さず、唇を重ねる。

 抑えきれない欲望をぶつけるように、彼女を抱きしめた――。



「……って、俺はいったいどんな夢を見てるんだ!」

 飛び起きた瞬間、思わず声が出た。

 はっとして、自分の口を両手で押さえる。

(聞こえてないよな?)

 部屋には誰もいない。だが、家の中には夢の中の女性がいる。

 ベッドに誘っても、見事にかわされた相手――捺美だ。

 欲求不満もここまでくると、笑えてくる。

とうとう夢にまで見てしまったらしい。

 けれど、この気持ちはただの欲望じゃない。

 日ごとに募る想いに、自分でも驚いている。

 これまで付き合ってきた女たちとはまるで違う。

 一緒にいても面倒で、我儘をきくのも億劫で、仕事を理由に会うのを避けては、結局長続きしなかった。

 それが今はどうだ。

 一分でも一秒でも早く家に帰りたい。

捺美と一緒にいる時間が楽しすぎて仕方がない。