【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

「大翔、あのさ……」

「ん?」

(私たちって、いつ離婚するの?)

 喉まで出かかった言葉を、どうしても口にできなかった。

そんなことを聞いたら、明日にでも離婚を切り出されそうで怖い。

 ――離婚したくない。

 けれど、心の準備のためには知っておきたい。

そんな相反する思いが、胸で渦を巻く。

「いや、なんでもない」

「なんだよ。気になるだろ」

「ありがとう」

「なにが?」

「夕飯作ってくれたことも……それに、お金のこととか」

 思わず殊勝に感謝を口にすると、大翔は面食らったように目を瞬いた。

「なんだよ、急に」

「ほら、そういう反応になるから言いたくなかったの」

 笑いながら話を終わらせる。

聞きたいことは飲み込んでしまったけれど、感謝の気持ちを伝えられただけでも良かった。

普段はなかなか言えないのだから。

 食後、お皿を洗っていると、大翔が横から手を伸ばしてきた。

「手伝うよ」

「ご飯を作ってくれたんだから、せめてこれくらいはさせて」

 そう言って断ると、なぜか大翔は背後から私を抱きしめてきた。

肩に顎を乗せられ、作業ができない。

「……邪魔ですけど」

 笑いながら振り返ると、大翔はむしろ腕に力を込め、離す気配を見せない。

まるで「絶対に手放さない」と言わんばかりに。