【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

「さ、佐伯さん……なにを言っているんですか?」

「離婚したら、俺のところに来ればいい」

「……は?」

 思考が真っ白になる。

驚きすぎて、頭のどこかのネジが飛んだのかと疑うくらいだ。

けれど佐伯さんは、真剣そのものの表情で切羽詰まった気配すら漂わせている。

「あの、それは……そういう問題じゃなくて」

 もしかして佐伯さんは、私のことを捨てられた野良猫か何かだと思っているのだろうか。

人間だし、一応、女性なのだけど。

「離婚して住むところがなくなったら困るだろう」

「そ、それなら一人暮らしをします。援助はしていただけるはずですし」

「なるほど……そうか。まあ、そこまでのケアがなければ、結婚してすぐ離婚なんて決断しないか」

 佐伯さんは顎に手を当て、考え込むようにうなずいた。

(ついでに奨学金も完済してもらいました、なんて言ったら呆れられるに決まってるから黙っておこう)

 人に話してみて、改めて客観的に考える。

この結婚は私にとっては利益が大きかったけれど、大翔にとっては……損ばかりなのかもしれない。

 多額の出費を強いられただけでなく、バツまでつけるなんて――大翔がかわいそうだ。