「社長が急いだ理由はわかった。だが工藤は――どうして結婚を承諾したんだ?」
「……実家から逃げたかったんです」
私の返答に、動揺していた佐伯さんの表情がすっと引き締まり、いつもの冷静な顔に戻る。
「やはり、なにかを抱えているとは思っていた。原因は実家か」
「父と再婚相手、それからその連れ子の家事を全部、私がやらなければいけなくて。だから、いつも定時で帰っていました。……ご迷惑をおかけしましたよね。すみません」
「いや、構わない。しっかり仕事をしてくれていた。俺は言葉がきついし、いるだけで圧があると言われる。そんな中でも頑張ってくれて……むしろ感謝している」
意外だった。佐伯さんがそんなふうに思っていたなんて。
「俺がもっと前に、工藤の抱えているものを聞いていれば……こんなことにはならなかったのに」
悔しそうに吐き出された声に、思わず目を瞬かせる。
「い、いえ……実家のことはあくまでプライベートですから。佐伯さんに手を煩わせるわけには――」
「俺にも、工藤ひとりくらい養えるだけの経済力はある」
私の言葉を遮って、佐伯さんは力強く言い切った。
女性ひとりどころか、家族をまるごと養えるくらいの経済力があるでしょうよ。
けれど、それとこれとは話が別では……?
「……実家から逃げたかったんです」
私の返答に、動揺していた佐伯さんの表情がすっと引き締まり、いつもの冷静な顔に戻る。
「やはり、なにかを抱えているとは思っていた。原因は実家か」
「父と再婚相手、それからその連れ子の家事を全部、私がやらなければいけなくて。だから、いつも定時で帰っていました。……ご迷惑をおかけしましたよね。すみません」
「いや、構わない。しっかり仕事をしてくれていた。俺は言葉がきついし、いるだけで圧があると言われる。そんな中でも頑張ってくれて……むしろ感謝している」
意外だった。佐伯さんがそんなふうに思っていたなんて。
「俺がもっと前に、工藤の抱えているものを聞いていれば……こんなことにはならなかったのに」
悔しそうに吐き出された声に、思わず目を瞬かせる。
「い、いえ……実家のことはあくまでプライベートですから。佐伯さんに手を煩わせるわけには――」
「俺にも、工藤ひとりくらい養えるだけの経済力はある」
私の言葉を遮って、佐伯さんは力強く言い切った。
女性ひとりどころか、家族をまるごと養えるくらいの経済力があるでしょうよ。
けれど、それとこれとは話が別では……?



