佐伯さんは、結婚後も変わらず私を工藤と呼んでくれる。
それがありがたかった。だって――すぐに工藤へ戻るのだから。
私は佐伯さんを見据え、覚悟を決める。
「もうすぐ……私たちは離婚します」
「えっ⁉」
いつも冷静な佐伯さんが、驚いて言葉を詰まらせる。
予想外の反応に、不謹慎だけれど――こんな表情もするのかと、思わず可愛らしく感じてしまった。
「もともとそういう契約だったんです。私たちは契約結婚です」
「す、すまん……少し、事実を飲み込む時間がいる」
佐伯さんは深呼吸をするように眉を寄せ、姿勢を正した。
「社長のおじい様の命令で、急遽誰かと結婚しなければならなかったのです。要は……誰でもよかった。その時たまたま、私がそこにいたというだけで」
言いながら、自分の胸がちくりと痛む。
そうだ。誰でも、良かったのだ……。
「つまり、工藤と社長は……付き合ってはいなかった?」
「はい」
それがありがたかった。だって――すぐに工藤へ戻るのだから。
私は佐伯さんを見据え、覚悟を決める。
「もうすぐ……私たちは離婚します」
「えっ⁉」
いつも冷静な佐伯さんが、驚いて言葉を詰まらせる。
予想外の反応に、不謹慎だけれど――こんな表情もするのかと、思わず可愛らしく感じてしまった。
「もともとそういう契約だったんです。私たちは契約結婚です」
「す、すまん……少し、事実を飲み込む時間がいる」
佐伯さんは深呼吸をするように眉を寄せ、姿勢を正した。
「社長のおじい様の命令で、急遽誰かと結婚しなければならなかったのです。要は……誰でもよかった。その時たまたま、私がそこにいたというだけで」
言いながら、自分の胸がちくりと痛む。
そうだ。誰でも、良かったのだ……。
「つまり、工藤と社長は……付き合ってはいなかった?」
「はい」



