【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。



 夕闇が外を包み、時計の針は二十時を指していた。

 定時を過ぎたオフィスは人影がまばらになり、蛍光灯の光だけが静かに机を照らしている。

私もまた、散らかった書類と未完了の仕事を広げながら残業を続けていた。

 これまで定時で帰るのが当たり前で、周囲から小言を言われる立場だったのに――社長と結婚してからは、逆にこうして残業を楽しんでいる。

 営業部長は「社長夫人に無理はさせられない」と定時退社を勧めてくるけれど、私にとってはこの時間が嬉しくてたまらない。

 大翔は「無理するなよ」と気遣ってくれるけれど、私が「ずっと残業したかったの!」と目を輝かせて言うので、苦笑しながら黙認してくれているのだ。

 睡眠も足りていて調子は上々。

サクサク仕事は進むけれど、佐伯さんの求める水準は高く、時間はいくらあっても足りない。

「まだ帰らないのか?」

 斜め前のデスクから、佐伯さんの低い声が響いた。

「はい、もう少しだけ。佐伯さんもまだですか?」

 効率の鬼とも呼べる彼が遅くまで残るのは珍しい。