【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

「いいの。私が作りたかっただけだから」

 向かい合って腰を下ろし、ビールで乾杯する。

 箸を取った大翔が、ひと口食べて目を輝かせた。

「……うま」

 静かに感動している様子に、胸の奥がじんわりと温かくなる。

「食事に行くのもいいけど、家で作って食べるのもいいよね」

「うん」

「また作ってもいい?」

 思いきって言うと、大翔は少し驚いたように目を瞬かせた。

「負担じゃないのか?」

「これくらい大丈夫。むしろ……作りたいの」

「捺美がいいなら、俺は嬉しい」

「私も。大翔が食べてくれることが嬉しいよ」

 微笑むと、大翔の口元にも、久しぶりに穏やかな笑みが浮かんだ。

(あ……大翔の笑顔、ひさしぶり)

 それでもまだ表情はどこか儚げで、顔色も青白い。

けれど少しずつ元気を取り戻しているのがわかって、胸が温かくなる。

 食事を終えて、キッチンで皿を軽く水洗いし、食洗機へ入れていると、大翔も横に並んだ。

「いいよ、休んでいて」

「捺美のそばにいたい」

 私が洗った皿を受け取りながら、淡々と食洗機に並べていく。

その動作がなんだか夫婦らしくて、胸がくすぐったい。

 後片づけを終えて手を拭いた瞬間、背後から大翔の腕が回ってきた。

 ぐっと抱きしめられて、首元に彼の顔が埋まる。