【改稿版】シンデレラは王子様と離婚することになりました。

(終わった……)

 久しぶりに迎えた静かな週末。

リビングのソファで、ぼんやりテレビを見つめる大翔の横顔を盗み見る。

 言葉にはしなくても、おじい様が彼にとってどれほど大きな存在だったかが伝わってきた。

(よし、夕飯でも作ろう……!)

 舌が肥えた大翔に手料理を出すのは気が引けていたけれど、よほど失敗しなければ大丈夫なはず。

自分を励ましながらキッチンに立つ。

 けれど包丁を握りながら、ふと胸に影が落ちる。

 私たちは、あとどれくらい“夫婦”でいられるのだろう。

 契約を交わした時には、すぐに離婚できる方がありがたいと思っていた。

 でも今は違う。大翔と離れることが、怖い。

 離婚すれば、私はただの社員に戻る。

 二人きりで会うこともなくなり、言葉を交わすことすらできなくなる。

 そう考えただけで、胸がぎゅっと痛んだ。

 私だけに向けられる大翔の笑顔。

知ってしまった、大翔の甘いキス。

すっかり恋人気取りで彼のそばにいる──その事実に気づいて、胸が痛む。

(バカみたいだな、私。すっかりうぬぼれてた)

 大翔にとって私は、ただ都合よく結婚して、いずれ離婚できる相手。

 もし彼が「離婚しよう」と言ったら、「いいよ」と笑って、すぐにでも家を出られるようにしておかなきゃ。

 それまでは、大翔の妻として、精一杯そばにいるだけ。