今日は婚約者同士の初めての顔合わせの日。お母様たちはとても喜んでいらしたけれど、私の心の内は晴れることを知らない。
もともとこの婚約は政略結婚なのだ。お互いが望まない結婚など、しないほうがいいというのに。氷織颯霞は、容姿、才能、文学とどれをとっても申し分のない完璧なお方だ。
第一印象は、冷たくもキレイな瞳が印象的だった。言葉や表情は巧みに誠実さを醸し出しているけれど、鋭く光った一瞬の眼光を、私は見逃さなかった。
銀色掛かった白髪の髪色に、肌は陶器のように白くて、男性とは思えないほどの美しさだった。
その見た目に反して、内面は温厚で優しそうな人ときた。両親はますます颯霞のことを気にいるだろう。
「七海さん。俺と貴女はこれからお付き合いをする、という関係になる。そう思ってもいいのですか?」
「はい。問題ありません」
優しく、綺麗な微笑みを湛える。長年そうして演技をしてきたせいで、もうこの笑みは意識せずとも普通に出来るようになってしまった。
私は、この一点の曇りもないキレイな瞳に一体どう映っているというのか。ちゃんと、優しい女性に見えているだろうか。