これじゃあ会話も出来ない……。


ヴィラン皇子の今の姿は、まるで最初から私の質問に答える気など毛頭なくて、自分だけの世界に浸っているように見える。


……はぁ、今日は颯霞さんが御屋敷にいなくてよかった。

そっと安堵の息を吐き、ヴィラン皇子に伝えなければならないことを話すために、もう一度口を開いた。


『(ヴィラン皇子、ちゃんと私の話を聞いてください)』

『(おっと、すまない。少し喋りすぎたね)』


失敬失敬、と言いながら今まで浮かべていた笑みを消したヴィラン皇子。

どんな時でも常に笑顔を浮かべていた彼が無表情になると、何だか得体の知れない緊張感が走る。


『(それで、日本国侵略の計画は順調に進んでいるのかい?)』


ヴィラン皇子の口から放たれたその直球な質問にビクリと僅かに肩が震えた。


それは、この本国の地でするべきでない禁忌の内容がその口から放たれたことに対しての驚きだった。