鞘から刀身をのぞかせた刀が、夜の闇にキラリと光る。俺は勢いよく刀を抜き取り、夜の奥まった深い森へと、ただ一人を想いながら駆けて行った。


「どうか七海さんに、沢山の幸せが訪れますように───」


たとえ貴女の隣に俺がいなくとも、七海さんがこの先も世界の穢れを知らずに幸せに生きていくことが出来ますように。


俺の願いは、ただそれだけだ───。


もう、欲張りになんかなるものか。俺は貴女がこの世界で生きてくれているだけで、こんなにも満ち足りた気分になれる。


七海さん───、こんなことを言うのは少しクサいかもしれないけれど、貴女は俺の心臓の一部のように、なくてはならない存在なんだ───。