次の相手は全国大会常連の強豪チーム。


勝てるわけがない。


部員達は気持ちで負けていた。



そんな中、海斗が口を開く。



「いやァーー、次が最後だな!最後ぐらい皆んなで楽しもうや!

おいおい!やる前から下向いててどがいするんじゃ?

いいかァ!100対0で負けるのと100対99で負けるのどっちがえんな?

どうせ負けると思っとんなら大間違いやァ!応援してくれとる皆んなにも失礼やし、そんなのダサいぞッ!

最後だと思うぐらいなら、最後らしく後悔しない試合にしようでェ!!!」



海斗の喝で部員たちの考えが変わる。


応援してくれる人たちのためにも良い試合をしようと……



たとえ負けたとしても後悔しないようにと。



そして、県大会出場を決める試合は始まった。


試合はやはり強豪校チームのペース。


点差がみるみる広がっていく。



だが、

仁くんたちの目は決して死んでなかった。


点差が広がっていくのに、声援は絶対に止まない。



むしろ、声援は大きくなっていく一方で、男子部員たちの背中を押す。



「仁くん頑張ってェーー!」


私の声援もきっと仁くんに届いているはず。


じわじわと点差を縮めていき、

40点あった点差が今は10点差に。



あと少しだった。


まるで、

窮鼠猫を噛むみたいに様変わりするチーム。


勝てる!








誰もが思っていた。



だけど、







反撃の狼煙もここまでだった……



仁くん達にとってこの日が最後の試合となった。


試合には負けたもの、鳴り止まない拍手と喝采。 



相手チームの部員達、

この試合を見ていた人達からも……



仁くん達は大粒の涙を流していた。




本当に良い試合だった。



「ありがとうございました」


体育館上のギャラリーに感謝の挨拶を残し、仁くん達、三年生は引退していった。