忘れられない恋

「ありがと」


俺はスマホが入った袋を受け取り、帰ろうとしていた。



「うん。仁君にまた逢えて良かった」


結空は俺の顔を見て微笑んだ。



「俺も……」



「彼女さんとお幸せに」



「あのさ……」



俺は結空にプロポーズ丘公園に行ってないと言われ、何で行かなかったのか理由を聞きたかった。



「うん?」



「その……何であの日……」


俺が結空に聞こうとした瞬間、俺の声が男性の声で遮られる……




「木栖さん、ちょっといい?」



店長だった。



「はい。ちょっと待って下さい!今行きます。ごめんね、それで?」


結空は店長に言った後、俺に尋ねた。




「あっいや、何でもない。仕事頑張って!」


俺は結空に手を振り、店を出る。



「う、うん。じゃあね」


結空は俺の背中を見届けた。



「木栖さんまだーー?」


店長が結空を急かす。



「はーーい」


最後、俺が言おうとした言葉が気になったが、結空は慌てて店長の許に行く。



俺もまた、あの日のことを聞けず、

複雑な心境で帰ることに。


また会いたいなんかではなく、

もうきっと会うことはないだろう。


俺はそう思った。



もう結空は俺に対して、気持ちなんてもうないのだから。





だって……



あの日、プロポーズ丘公園に来ていないのだから。