エステルがフェンデルから酒の入った壺を取り上げる。

 それを見てくすくす笑ったのはレナーテだ。

「もう大人なんだから、エステルに叱られるようじゃいけないわよ」

「心はまだ五歳だからな」

「じゃ、酒飲めねーじゃん?」

「ディルクの言う通り!」

 エステルはフェンデルの手を逃れて氷室に酒をしまいに行く。

 数か月前までは村人のほとんどが口にしたこともなかった魚貝類が目についた。

 季節が変わってもラズは仲間とともにメイナ村へ海産物を届けに来てくれた。

(バターが安定供給されるようになったら、絶対ホタテのバター焼きを食べるんだ)