c組へ移動しようと方向転換したとき、目の前に影がかかって見えなくなった。

「ぅわ…」

よろけそうになって足を後ろに出すとフッと肩を掴まれ、抑えられた。

「何君。盗み聞き?」

「い、いえ。たまたまここにきた。それだけです、」

嘘をついているわけではないから本当のことを言った。

「なんで?」

「はい?」

なんで?とは何に対して?

全く整っていない会話に戸惑う私。

「なんで俺から目を離さないの」

「え?いや、習いませんでしたか?小学校の時。相手の目を見て会話しましょうね〜って」

後ろの声は遠ざかっていき、反対側へ曲がったことがわかった。

「女はみんな恥ずかしそうに目を伏せて髪の毛を触るもんだろ」

「知りません。女の子がみんなそうだなんて間違いですよ。私より長く生きてるはずですよね。そんなことも知らないんですか?」

女はみんな、という言い方にイラッと来た私は2年生であろう先輩のことを煽り倒す。