「うん。要先輩に傷口を手当てしてもらうと、治りが早いっていう。それってもしかして傷口を舐めて治してる、とか?」
「ああ」
あっけなく返ってきた答えに、私は愕然とした。
……なにが魔法の手よ。
「保健室にやってくる女子の血を片っ端から吸っては、英雄扱いされてるってふざけた話だよな」
……ああ。
なんだか頭が痛くなってきた。
みんな記憶を消されちゃうから、覚えてなくて当然だもんね。
どれだけの女の子が被害に遭ってるんだろう。
「この間、噛み痕消してくれたんだよね? どうして要先輩にはわかったの?」
「普通の人間には見えなくなるけど、ヴァンパイアには消した噛み痕も見えるんだ」
「そうんなんだ……」
あのとき私の首をジッと見ていたのはそういうことか。



