力を入れて固まっていると、理都くんの唇が私の頬に触れた。
唇の感覚がダイレクトに伝わってくる。
傷口が唇で覆われて、傷の線に沿って舌でなぞられた。
「……んっ、あっ……」
思わず、理都くんのシャツをぎゅっとつかんでしまう。
どこかに力をかけないと、自分が保てなくて。
胸がドキドキして、頭がくらくらして……。
まるで吸血されているときみたい。
やがて、チュッ、とリップ音を残して理都くんの唇が離れた。
舐められた、というよりはキスされた感覚に近かった。
「治ったよ」
「あ、ありが、とう……」
不思議。
微かに感じていた痛みもなくなり、窓ガラスに映った自分の顔には傷なんてどこにも見当たらない。
この部屋が薄暗くてよかった。
きっと私の顔は真っ赤だから……。
「あの噂……」
「噂……?」



