「ヴァンパイアは、特に五感が優れてるんだ。あのとき、水野が俺の名前を呼んだのは俺の耳にすぐ届いた」
「……っ!」
まさか! そんなことが!
驚愕の事実を伝えられて、嬉しいよりも恥ずかしいが先に来る。
「呼んでくれて、助かった」
なのに理都くんは、下心に触れることなくほっとしたように言った。
「それは私のセリフだよっ……。来てくれて、ありがとうっ」
来てくれなかったら、今頃私は要先輩に吸血されていたかもしれないんだから。
「ここ……」
理都くんの手がゆっくり私の頬に伸びてきた。
それはさっき、要先輩の腕時計が当たった場所。
「……っ」
思わず身構えたけど、触れたその手があまりに優しくて。
保健室から続いていた緊張が一気に解けて、涙がこぼれそうになった。



