極上ヴァンパイアは、彼女を溺愛して離さない


少し薄暗くて湿っぽいそこは、廃墟という言葉がよく似合う様相だった。

半分ずり落ちたカーテン、乱雑に積み上げられた椅子と机。

噂どおり、ちょっと怖い……。


「アイツになにされた?」


この雰囲気に気おされてる私に、理都くんは開口一番核心に迫ってきた。


「わかったと思うけど、アイツもヴァンパイアだ」


私はこくんとうなずいた。

もう驚くっていう次元は超えた。


「どうして……理都くんがあそこに……?」


理都くんが来てくれて私は助かったけど、あのタイミングで来るなんて。


「助け、呼んだだろ?」

「助け……?」


反芻して、首をかしげた。

確かに名前は呼んだ。

でもあれはうわ言のように出した言葉だった。

ほぼ無意識に。

まさかあれが、聞こえてたっていうの?