「先輩にすごい物言いだね」
「うるせえ」
「はいはい。そういうことなら仕方ないもんね。なるべくそうする」
「絶対って誓えよ」
「怖いなあ。そんなんじゃあの子に嫌われちゃうよ?」
要先輩はまたアンニュイな笑顔を見せると、ふーっと息を吹きかけて前髪を遊ばせた。
「仕事は終わったの?」
理都くんがくるりと振り返る。
「う、うん……」
震える手で、バインダーをもとに戻す。
備品もたいして減っていなかったから補充の必要もない。
「じゃあ行こう──」
手を引かれ、連れて行かれたのは旧校舎だった。
立ち入り禁止にはなっていないけど、幽霊が出るという噂もあって、私も怖くて近寄ったことはない場所。
なのに理都くんは慣れたように足を進め、また慣れた手つきで一室のドアを開けた。



