理都くんがヴァンパイアと知ったときと違い、今は純粋に怖さしかない。
記憶が消えないという私は、今日も手のひらをかざされても意識はちゃんとここにある。
「理都くん助けてっ……!」
とっさに口から出たのは、理都くんの名前だった。
ヴァンパイアの理都くんに助けを求めるなんてどうかしてるかもしれない。
だけど、頭には理都くんの顔しか浮かばなかったんだ。
そんな願いもむなしく、要先輩の顔が首元に近づいて、唇が今まさに私の首に触れようとした瞬間。
「離れろっ!!」
別の声が飛び込んできて、グイ──と背中を引っ張られた要先輩が、私から遠ざかって行ったのだ。
なにが起きた……!?
「いってーなあ―……」
床に倒れこんで顔をしかめる要先輩に、鋭い刃のような目を向けているのは──理都くんだった。



