「は、はい……」
なるべく振り向かないようにして軽く会釈だけした。
さっきまでとは違い、確認を進める手が少し震えた。
背後からは、ズズズ……とコーヒーをすする音が聞こえる。
なんだかこっちを見られている気がして作業に集中できない……っ。
「ねえ」
「はいぃぃぃっ!」
だから呼びかけられた瞬間、変な声が出ちゃった。
「ふふふ、どうしたの、そんなに驚いて」
これは墓穴を掘ったかも。
気にしてない素振りが台無しだ……。
「な、なんでもないです……」
バインダーを抱えながら小さく声を落とすと、ペッタンペッタンという足音と、コーヒーの香りが近づいてくる。
そして、ぬっと私の前に顔を出した。
「あれー? キミどっかで会ったことある?」
フワフワの髪の毛を指先でもてあそびながら、口角をあげる要先輩。



