真横に来たとき、ピタリと足を止めた。

要先輩の視線は、まだ私に向けられたまま。

いつものように、アンニュイな瞳で。


えっ、なにか?

探るような、意図のつかめないその視線にドキドキが増していく。


私──というよりも、見ているのは首元で。


「あっ」


理都くんに噛まれた個所を押さえたのは無意識だった。

イケないことをされた羞恥心みたいなのが働いたんだ。

だけど、それは無意味だと気づいたのはすぐあと。

噛み痕は消してくれたから、見えるはずない。


じゃあいったいなんなの。

やだっ……早く行って……っ。


「ジロジロ見るのやめてもらえます?」


私の動揺に気づき、助け舟を出してくれたのは理都くん。

私の肩を引き寄せ、頭を隠すように自分の胸の中へ包み込んだのだ。


「……っ!」