私はブラウスの胸元をギュッと握りしめて、呼吸を整える。
びっくりした。
ほんとに吸われちゃうかと思った。
「俺、どうかしてた……」
髪をクシャッとかきあげる仕草は、とても後悔している様子で。
「やっぱりお前……記憶が消えないんだな」
あ……。
それ、この間も言われたっけ。
手をかざせば普通の人間の記憶は消える……って。
そんなことよりも今は。
「あの、だ、大丈夫?」
理都くんの肩に手を添えた。
「なに人の心配してんだよ。今襲われそうになったんだぞ」
私を見上げる彼は、怪訝そうに眉をひそめた。
「だけどっ、あのっ……」
口調はいつもどおりだけど、おでこに手を当てている姿はとてもつらそうに見えたから。
こんな症状に、私は覚えがある。
青白い顔、ふらつく体。
「もしかして、貧血……?」



