そしてこのとき、どうしてか、水野の血を蓮水に吸わせたくないと思ったんだ。

でも、それが失敗だったのか。


『えっ……』


記憶が消せず、俺は慌てた。

挙句にヴァンパイアなのか問われ、結局打ち明けてしまった。

すると水野は、驚きつつも納得したように言った。


『この間、理都くんの瞳が赤く光ったように見えて……』


ああ、そういうことか。

俺のことを観察するように見ていた理由はそれか。

でも、普通の人間にそれが見えることはないはずなのに。

どうしてだ?


……待てよ。

聞いたことがある。

何百万人かにひとり、記憶が消せない人間がいるらしいと。

特別な血を持ち、その血を一度吸ったら、中毒のように求めたくなるって。