俺に好意を持っているというより、なにかを探るような目に違和感を覚え、あの日警告したわけだけど。

効き目がなかったのか?

しかも、変なことを言う。


『殴られていい人がいるわけないもん!』


俺が殴られようが、水野にはなんの関係もないのに。

ただのおとなしい女子という印象だっただけに、意外だ。


『とにかく、理都くんが殴られなくてよかったぁ……っ』

『……っ』


まるで自分のことのように心から安堵するその様子に、胸の真ん中が変な音を立てた。

だって、今までそんな言葉をかけられたことがないから。

だからか、無性に彼女のことが気になってしょうがない。


……にしても。

さっきから意識を持っていかれるのは、甘い匂い。

つい引き寄せられてしまい、水野の足元に目線をやると、膝にうっすら血が滲んでいた。