やつらの気が一瞬そっちに流れた瞬間、俺は能力を放出させた。
カッと目を見開き、自分の周りに結界を張る。
拳を握ったヤツの手は、それ以上前に動かなくなり、風が立ち込め不穏な空気があたりを包む。
これが、ヴァンパイアが使う“殺気”だ。
普通の人間は恐怖におののき逃げ去る。
『な、なんだよっお前っ……』
『こえーー……』
目の前のやつらも、尻尾を巻いて逃げて行った。
この場に残されたのは、俺と……意味不明な女。
近寄ると、倒れているのは水野だった。
派手に地べたにひっくり返り、悲惨な有様……。
コイツ、また俺のことを付け回してたのか……?
水野が最近、俺のことをチラチラ見ているのは気づいていた。



