昼休みの賑やかな声が遠くに聞こえる旧校舎の一室。

誰も近寄らない場所だし静かに過ごせるから、昼休みはたいていここにひとりでいる。

以前は応接間だったのか、ソファがあるから、いつもそこで寝転がっている。


だが室内の荒れ方は異様だ。

破れ落ちたカーテン。

部屋の隅には蜘蛛の巣もある。

蛍光灯も取り外され、不気味な暗さ。

そんな廃墟のような空間でも、俺にとっては教室にいるよりもよっぽど居心地がよかった。


てか……クラスメイトの水野愛菜。

どうして記憶が消せなかったんだ?

目を覆うように手をかざせば、俺と会った前後の記憶はすっかり抜け落ちるはずなのに。


「アイツはいったい何者なんだ……」


革張りのソファに身を沈め、俺は手のひらをジッと見つめた。