「まさかっ……!」
慌てて膝に触れてみると。
全く痛くないし、目を凝らしても傷口すら見当たらない。
「普通、人間の目の前に手をかざすと、そのときの記憶を消すことができるんだ。なのにお前は全部覚えてた。どういうこと
だ?」
「そんなこと言われても……」
「しかも、血がとんでもなく甘い匂いがした。匂いだけじゃない。味も……」
そう言って目をそらした理都くんの顔は、ほんのり赤くなっているような気がして、こっちが恥ずかしくなった。
ううっ……。
それってどういうことなんだろう。
「俺のことが怖いか?」
ヴァンパイアは怖い存在じゃない。
これは、小さいころから教えられてきたこと。人間とヴァンパイアは持ちつ持たれつで、うまく共存してるって。
「……ううん」
私は小さく首を横に振った。



