今のはなかったことにして、今度こそその場から立ち去ろうとしたけど、
「……っ!?」
それを許さなかったのは理都くんの手。
しっかりと腕をつかまれていたんだ。
「待て」
「えっ……」
その手がものすごく冷たくて、心臓がヒヤリとした。
まるで、血が通ってないみたいで。
「……お前、何者……?」
真顔で問いかけられた言葉は、私の頭をハテナで埋めた。
「えと、質問の意味が……」
生まれてこのかた、何者かなんて質問、投げられたことない。
「それはどういう……?」
おそるおそるたずねる私。
真面目に答えるなら、水野愛菜16歳。
共働きの両親の長女として生まれ、弟がひとりいます。
って、この期に及んでそんなこと聞きたいの?
「だから、その……」



