「まあねー。昨日は夜景デートっていうシチュでの撮影で、帰って来たのは12時近くだったんだあ」
「12時!?」
私はそのころ、もう夢の中だったよ。
人気モデルも大変だなあ。
「愛菜ちゃん、今日もいい匂いがするねー」
そう言って世羅くんは、私の髪の毛を指ですくった。
「わわっ、世羅くんっ!?」
世羅くんてば、たまにこういうこと言うんだよね。
それより、いい匂いって?
私、香水つけてないのに。
「すごい甘い匂いがする」
とまどっている私に、そう言って鼻をクンクンさせた。
「えっとぉ……。さっきチョコ食べたからかな?」
思い当たるのはそれくらいしかない。
だけど世羅くんは首を振る。
「そういうんじゃなくて。本能的に感じる匂いっていうの? なんだろう、愛菜ちゃんって本当にいい匂いがするんだよねえ」



