「また会ったね」
要先輩は、今日もアンニュイな笑顔で私を見おろす。
ひぃぃぃぃ。
こんなところで会っちゃうなんて!
あれだけ警戒していたのに、こんなにもあっさり対峙してしまい、逃げることすら忘れた。
どうして今日は保健室にいないの!?
外にいるなんてことあるの!?
「ボ、ボールを……」
とにかくボールを返してもらわなくちゃ。
手を伸ばすけど、要先輩は私に歩み寄ってくるだけでボールを持った手はこちらへ伸ばしてくれない。
――ジリッ、ジリッ。
ボールは返してもらわなきゃいけないのに、それに反して私の足は後退していく。
「ボール、いらないの?」
「い、いります……」
「じゃあ取りにおいでよ」
人質のように手のひらにのせられたバレーボール。



