明らかに理都くんを見て逃げたのはわかってるはずなのに、理都くんから問いつめられることはなかった。
ずっとソワソワしてたから、助かったけど……。
その日のお昼休み。
「理都くんて、昼休みどこに行ってるんだろうね」
「すぐ姿消しちゃうよね」
「友達の友達がコクろうと思って探したけど、どこにもいなかったって」
「今度あとつけてみるー?」
今日も理都くんの話に花を咲かせるいつものメンバー。
ほんと、どこに行ってるんだろう。
人間嫌いだって言ってたけど、徹底してるなあ。
…………あ。
もしかして旧校舎だったりして?
ずいぶん慣れた様子だったし、あそこならきっと誰も来ない。
人を寄せつけない独特なオーラを纏う理都くんは、想像していた人とずいぶん違った。
クールで、近寄りがたい存在ではあるけれど。
その胸も、声も、手も。
優しいことを知った。
私、気づけば理都くんのことばかり考えてる……。
さっきも、理都くんが短命になるかもって聞いて涙があふれてきちゃったし。
秘密を共有してるからっていうのはもちろんだけど。
それだけ……?
自分の気持ちなのに、よくわからない。
「うわっ、切っちゃった」
「やだ大丈夫?」
騒々しい声がして、頭が理都くんで埋め尽くされていた私も意識がここに戻った。