理都くんと旧校舎で話した日から1週間が経った。
私の血は、本当に特別なのかな。
いたって平凡な私なのにどうして……?
しかも、それを知られた要先輩に、今後目をつけられる可能性が高いって。
いつ襲われるか怯えながら生活するなんて、そんなのいやだよ。
それを避けるためには、理都くんと契約すれば安全だと提案されたけど。
問題はその契約方法なんだ。
理都くんは、私の目を見てはっきり告げた。
『キスをすること。それも、深いキス』
キスって、唇と唇、だよね……。
私と、理都くんが。
考えただけで心臓がバクバクしてくる。
しかも深いキスって、その、舌と舌が……。
うわぁぁ~~~っ。
そんなのムリムリムリ……っ!
「……ちゃん! 愛菜ちゃん焦げてる!!」
──へ?
不意に耳に入ってきた声に視線を下げると。
「わーっ!!」
目の前には、微かに煙が立ちのぼっているフライパン。
その中にある黄色い物体は、ジュ~って音を立てながら焦げ始めている。
「きゃ~!」
私は急いで火を止めて、フライパンを持ち上げた。
ただ今、調理実習の最中。
卵焼きを作っていたんだけど、フライパンを火にかけながら考え事しちゃってた!