次の日。
朝、窓から差し込む光が眩しくて目を覚ます。右側を見ると、クロマルが私に寄り添うようにしてまだ気持ちよさそうに眠っている。
「おはよう」
小声で朝のあいさつだけをして、私は起こさないようにそーっと起き上がると、寝室に置いてあった鏡を見て身支度を整える。といっても、服のしわを伸ばしたり、髪を梳かすくらいだ。
――ずっと同じ服を着ているわけにはいかないし、下着も必要だわ。……ユーインには言いづらいし、自分で布や服を調達しないと。
牢に入って、一度も家に帰れないまま追放されたせいで、荷造りなんてできなかった。最低限の衣類だけでもどうにかして持って来ればよかったと、私はいまさらながら後悔する。
「やることはたくさんあるけど、とりあえず……」
まずは朝食の準備ね。
キッチン兼リビングに続く扉を開けると、ソファにユーインの姿があった。クロマル同様、まだ寝ているようだ。
この時、なぜか私のなかの好奇心がうずいて、キッチンではなくソファにいるユーインのほうへ方向転換してしまった。そしてユーインの寝顔を、間近でじーっと見つめる。
――綺麗な肌に長いまつ毛……。髪もサラサラだし……本当に綺麗な顔。
オスカー様を見たときも、こんな美しい人は見たことがないと衝撃を受けたが――この世には、さらに上をいく存在があったのか。しかも、こんな場所で出会うとは不思議なものだ。ずっと王都にいたら、このことに気づかないままだったかもしれない。
すると、急にユーインの目がぱちっと開いた。
「ひあっ!?」
ばっちりと目が合ってしまい、心臓が跳ね上がると共に変な声を上げてしまった。
「ち、違うのユーイン。偶然、そう、偶然ここにいただけで」
慌てて言い訳していると、ユーインはまたゆっくりと瞼を閉じる。次第に、規則正しい寝息も聞こえるように……。
――寝ぼけてただけか。びっくりした。
バクバクしている心臓に手をあてて、私はほっと胸を撫でおろす。そして改めて簡単な朝食を準備すると、ちょうどそのにおいで目を覚ましたユーインとクロマルにそれらを振る舞った。
一緒に食卓を囲みながら、ユーインに「今日はどうするか」と問われたため、私は昨日から決めていた答えを口にする。
「もちろん、今日もめげずに村人と交流して、魔物との確執をなくすわ」
** *
こうして、私は住人たちの家が集まるエリアへと向かうことにした。昨日と違うのは、ユーインとクロマルという護衛をつけていないこと。しっかり考えて、やはり最初はなんとしてでも話を聞いてもらうこと、私を村人に受け入れてもらうことが重要だと判断した。そのために、昨日と同じ体勢で向かっては二の舞だと思ったのだ。
……とはいっても、相手は容赦なく石を投げつけてきたこともあって、ひとりは危険。それを見越して、ユーインは隠れて私の後をついてきてくれると言っていたが……辺りを見渡してもどこにいるかはちっともわからない。
――近頃の下級騎士は、スパイみたいに隠れるのも上手なの?
少々疑問を抱きながらも、ユーインがどこかで見守ってくれているならば心強い。そしてクロマルはというと、とある任務を頼んでいた。
それは、終末の村の森に住む〝いちばん偉い魔物〟……いわゆる、ボス魔物を見つけてもらうこと。
魔物は基本的に、瘴気の出ている森から湧いて出てくる。なぜならその瘴気が人間界と魔界を繋ぐ場所になっていると言われているからだ。だから聖女は森に結界を張り、外に出てこないようにしたりする。
そしてどの森にも、いちばん力が強いボスがいる。ほかの魔物はそのボスに従うという習性があるのだ。だからまずはボスを見つけて、その魔物を私の力で手懐けることができれば、ほかの魔物たちも村人を襲うことはまずない。
朝、窓から差し込む光が眩しくて目を覚ます。右側を見ると、クロマルが私に寄り添うようにしてまだ気持ちよさそうに眠っている。
「おはよう」
小声で朝のあいさつだけをして、私は起こさないようにそーっと起き上がると、寝室に置いてあった鏡を見て身支度を整える。といっても、服のしわを伸ばしたり、髪を梳かすくらいだ。
――ずっと同じ服を着ているわけにはいかないし、下着も必要だわ。……ユーインには言いづらいし、自分で布や服を調達しないと。
牢に入って、一度も家に帰れないまま追放されたせいで、荷造りなんてできなかった。最低限の衣類だけでもどうにかして持って来ればよかったと、私はいまさらながら後悔する。
「やることはたくさんあるけど、とりあえず……」
まずは朝食の準備ね。
キッチン兼リビングに続く扉を開けると、ソファにユーインの姿があった。クロマル同様、まだ寝ているようだ。
この時、なぜか私のなかの好奇心がうずいて、キッチンではなくソファにいるユーインのほうへ方向転換してしまった。そしてユーインの寝顔を、間近でじーっと見つめる。
――綺麗な肌に長いまつ毛……。髪もサラサラだし……本当に綺麗な顔。
オスカー様を見たときも、こんな美しい人は見たことがないと衝撃を受けたが――この世には、さらに上をいく存在があったのか。しかも、こんな場所で出会うとは不思議なものだ。ずっと王都にいたら、このことに気づかないままだったかもしれない。
すると、急にユーインの目がぱちっと開いた。
「ひあっ!?」
ばっちりと目が合ってしまい、心臓が跳ね上がると共に変な声を上げてしまった。
「ち、違うのユーイン。偶然、そう、偶然ここにいただけで」
慌てて言い訳していると、ユーインはまたゆっくりと瞼を閉じる。次第に、規則正しい寝息も聞こえるように……。
――寝ぼけてただけか。びっくりした。
バクバクしている心臓に手をあてて、私はほっと胸を撫でおろす。そして改めて簡単な朝食を準備すると、ちょうどそのにおいで目を覚ましたユーインとクロマルにそれらを振る舞った。
一緒に食卓を囲みながら、ユーインに「今日はどうするか」と問われたため、私は昨日から決めていた答えを口にする。
「もちろん、今日もめげずに村人と交流して、魔物との確執をなくすわ」
** *
こうして、私は住人たちの家が集まるエリアへと向かうことにした。昨日と違うのは、ユーインとクロマルという護衛をつけていないこと。しっかり考えて、やはり最初はなんとしてでも話を聞いてもらうこと、私を村人に受け入れてもらうことが重要だと判断した。そのために、昨日と同じ体勢で向かっては二の舞だと思ったのだ。
……とはいっても、相手は容赦なく石を投げつけてきたこともあって、ひとりは危険。それを見越して、ユーインは隠れて私の後をついてきてくれると言っていたが……辺りを見渡してもどこにいるかはちっともわからない。
――近頃の下級騎士は、スパイみたいに隠れるのも上手なの?
少々疑問を抱きながらも、ユーインがどこかで見守ってくれているならば心強い。そしてクロマルはというと、とある任務を頼んでいた。
それは、終末の村の森に住む〝いちばん偉い魔物〟……いわゆる、ボス魔物を見つけてもらうこと。
魔物は基本的に、瘴気の出ている森から湧いて出てくる。なぜならその瘴気が人間界と魔界を繋ぐ場所になっていると言われているからだ。だから聖女は森に結界を張り、外に出てこないようにしたりする。
そしてどの森にも、いちばん力が強いボスがいる。ほかの魔物はそのボスに従うという習性があるのだ。だからまずはボスを見つけて、その魔物を私の力で手懐けることができれば、ほかの魔物たちも村人を襲うことはまずない。


