【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

 そうこうしている間にも女性達がアシュレイを包囲し、押し合いへし合いしながら彼を口説きにかかる。

 端から見るとその光景は、甘い蜜に群がる蟻の大群のようだった。

 もっとも、その『甘い蜜(アシュレイ)』は酷く塩っぱい態度を取っているのだが。
 
 
「あの、私たち、これからそこのカフェに行くんですけど、ご一緒にどうですか?」

「結構です」

「騎士のアシュレイ・クラーク様ですよね? うわぁ、すごーい! 戦争のお話、興味あるなぁ。武勇伝とか、ぜひ聞かせてください~!」

「国家機密です」

「ええ~、いいじゃないですか~!」

「私もぜひ知りたいです! どうやって敵の大軍を倒したんですか?」
 
 無神経な質問の数々に、ただでさえ愛想のなかったアシュレイの表情がさらに凍り付く。

 正直、あの女性の群れに割って入るのは嫌。
 けれど好奇の目に晒される彼を放っておくことも出来ない。
 
 
「そろそろ家族が戻ってくるので、もうお引き取り下さい」

 
 アシュレイが硬質な声でそう言い放った瞬間、私は『今だ!』とイアンの手を引いて駆け寄った。