【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

 慣れない場所で緊張したのか、理髪店を出たクラーク親子は酷く疲れた様子だった。
 
 二人とも流行の髪型になり見違えるほど格好良くなったのに、表情はどんよりしている。

「お二人とも、大丈夫ですか?」

「大丈夫じゃないよぉ~。オシャレって、たいへんだ……。いっぱい人が集まってきて、つかれちゃった……」

「俺も、さすがに疲れた」とアシュレイが頷く。

 英雄親子を、まさか庶民も通う普通の理髪店に行かせる訳にはいかない。そこで私が選んだのは、貴族御用達の店だった。
 
 スタッフの接客も良く、個室完備でプライベート面も安心。
 
 ……のはずだったのだが、客の貴族たちが美形騎士を一目見ようと個室に押しかけ、店内は一時騒然となった。
 
 店側がすぐさま騒ぎを収めてくれたものの、慣れない外での散髪に加え、人々にジロジロ見られた二人はさぞ疲れたことだろう。