【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

 謝るのは(しゃく)だけど……勝手なイメージで悪女のレッテルを貼られ、ひとから不当に憎まれ殺されるのはもうごめんなの。

 今世を穏やかに生きるためには、恨みの芽は出来るかぎり摘んでおかなきゃ――。

 
 顔を上げると、エリザが信じられないものを見るような目でこちらを眺めていた。
 
 そりゃそうよね。

 まさか、自分が奪い取った男の元婚約者に謝罪されるなんて、想像もしなかったでしょうよ。

 戸惑った様子のエリザを見て、少しだけ胸がすっとした。

 よし、次だ――と、今度はオスカーに向き直る。

 彼もエリザ同様、困惑の表情を浮かべていた。

「オスカー様」

「なっ、なんだ」

 私は一旦言葉を切り、目を伏せて気持ちを整えた。

 はっきり言うと『滅んでしまえッ! この、最低サイアク浮気男~~!』と怒鳴ってやりたい気分でいっぱいだ。

 なんなら言葉が喉まで出かかっている。

 だいたい、私のような顔と性格のキツい女がタイプじゃないなら、最初から婚約しなければ良かったのに。

 百歩譲ってエリザに心移りしたのは許しましょう。

 でもそれなら、公衆の面前で一方的に婚約破棄などせず、秘密裏に話し合い、円満かつ綺麗に関係を清算するのが礼儀でしょう。

 正直、超ムカつく!
 
 でも今だけはぐっと堪えて、私は悪女顔に精一杯しおらしい表情を浮かべた。