「はい……。私はずっと、ビクトリア様に虐められてきました。挨拶を無視されたり、『オスカー殿下に近付くな』と罵倒されたり。その上、宮廷侍女長に命じて、私を辞めさせようと……」

「あぁ、可哀想なエリザ。泣かないでおくれ」

「ありがとうございます、オスカー様」

 
 涙を流すエリザに、そっとハンカチを差し出すオスカー。
 寄り添う二人はまるで恋人同士のよう……というか、実際恋人なのだろう。
 
 本人たちは私を断罪しているつもりだろうけど、実際は、自分たちの浮気を公衆の面前でアピールしているようなものだ。

 
「侍女をいびるような女性は、僕の未来の伴侶には相応しくないと判断した。これが理由だ」

 
 婚約破棄に異存はないが、やってもいない罪で裁かれるのは勘弁願いたい。

 私は正々堂々と胸を張って、自分の無実を主張した。
 
 
「私はエリザを虐めてなどおりません。彼女は、立場をわきまえず殿下を敬称なしで呼び、言葉遣いも不適切。さらに、私という婚約者がいると知りながら、殿下と親しくなろうとしていました。これらの行いを正すべく苦言を呈したまでのこと」