「ふぃ~、つかれたよぉ~! ハゲシイたたかいだったぜぇっ!」と、イアンがませた口調で言う。

 ビクトリアも苦笑しながら「ええ、本当に」と頷いた。

「でも、ふたりの意見が真逆なおかげで、華やかで上品なすごく素敵な結婚指輪が見つかりましたね」

「ああ、そうだね。俺とビクトリアだけじゃ、あのデザインは選ばなかったかもしれない」

「どう、僕のアドバイス。やくにたった? 僕、えらい? すごい?」

「ええ、すごいです!」「ああ、とっても偉いぞ」

 アシュレイとビクトリアに頭を撫でられて、イアンがぴょんぴょん跳ねる。

 三人手を繋いで馬車まで歩く道中。橙色の夕焼け空に、カラスが「カァ、カァ」と鳴きながら彼方に飛び去っていった。

『カラスと一緒に、帰りましょう~』と、ビクトリアが聞き慣れぬ歌を口ずさむ。
 彼女の自作か、それとも異国の歌なのか、心地よいメロディーだった。

 地平線に沈む太陽を眺めながら、ビクトリアがぽつりと呟いた。