【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました

 あなた、この場でその発言はやめた方がよろしくてよ。
 ファンにお仕置きされちゃうわよ。

 私の心の声は伝わるはずもなく、彼はペラペラ喋り始める。

「若いうちは戦いに出られるからいいが、老いた騎士の末路は悲惨だぞ。爵位も領土もなく、稼ぐことも出来ない。そんな男に嫁ぐ女は悲惨――いでででで!」

 話の途中で、男が急に悲鳴をあげた。
 
 まさか本当にファンにお仕置きされた!?

 驚いて様子を伺うと、男性は片足を令嬢に思いっきり踏みつけられていた。

「お兄様、見苦しい真似はお止めになって。あと、ご存じないの? 今度の戦勝記念パーティで、アシュレイ様には男爵位と領土が与えられるのよ。家だって凄いんだから! 新しくて立派なお屋敷が与えられて、既にご家族はお引越しされたって聞いたわ」

「お前、詳しいな。まぁ、男爵など、取るに足らない下級貴族さ。……だっ、だから、痛いから! 僕の足を踏むのをやめてくれよっ!」

「あら、ごめんあそばせ」

 半泣きになる兄と、澄まし顔の妹。これ以上ここに居たら、見知らぬ兄妹の掛け合いに笑ってしまいそう。

 吹き出しそうになるのを堪えて、私は人混みをかき分け馬車へと戻った。